カンボカンボジア料理の ヤシ砂糖

 

ヤシ砂糖製造は重労働  

東南アジアにはヤシ砂糖を製造し、料理に使用す る習慣があります。 カンボジアでも古くから全土で製造 され、料理には欠かせない調味料となっています。 製 造にあたっては特に大がかりな工場ではなく、いま だに各農家がそれぞれに家内工業で製造しています。

ヤシ砂糖はカンボジア語で「トナオッ」 と呼ばれ ある砂糖ヤシの樹(パルミラヤシ)の樹液を原料に作 られますが、この樹液の採取がなかなかの重労働です。ヤ シの花の先端から染み出る樹液を 「アンポン」 と呼 ばれる竹筒にため、 それを朝夕の2回樹に登って採 取します。 しかし、この砂糖ヤシの樹は10~20mも の高さに成長し、 花は当然、 頂上部分の葉が密集す るあたりに咲く。 そのため、一度に十数本の樹に登 り降りしなければならない樹液採取はけっこうな重 労働となります。 この樹液は採取された直後はやや酸味 のあるサッパリとした味で、これが砂糖になるとは とても思えない。 ちなみに、この樹液を発酵させた 物がヤシ酒となります。

さて、ここまでは男性の仕事でここからは女性に バトンタッチです。 集められた樹液はすぐに発酵が始ま そうなるとヤシ砂糖造りには向かなくなります。 樹 液には発酵を遅らせるため 「ポペール」 と呼ばれる 木の枝を入れておくが、 それでものんびりとはして いられません。すぐに女性たちが家の庭先で大きな鍋 を用意し作業を開始します。 作業といっても4~5時 間はただ樹液を煮詰めるだけです。 大変なのは焦げ付か ないよう目が離せないことで、またときおり大きな ヘラでかき混ぜなければなりません。 わずかでも焦げ 付けば味が落ちるため、いっときたりとも離れられ ません。ちなみに後記のヤシ砂糖造りの見学は、この煮詰める作業を見学することになります。 

じっくりと5時間ほどに煮詰められた樹液は粘度 のあるドロドロの茶色いアメのようになります。ここか ら火を落とし、冷めていくまでの間に大きなヘラで さらにかき混ぜ続けていきます。ここまでくれば味はも う立派な砂糖にできあがっています。 指先に付けてな めてみれば、このままおやつでも食べられそうです。

これで製造作業はほぼ終了です。 できあがったアメ状 のヤシ砂糖は、一部は固まる前にバケツに移し市場 などへの出荷用に保管します。 残りは筒状のカンに入 れて固形状にして、取り出したあと、ヤシの葉でく あるんで固形のヤシ砂糖にする。 農家の庭先や市場で みやげ物用として売られている物がこれにあたります。

 

 

ヤシ砂糖は重要な現金収入 

このヤシ砂糖製造は11~2月の乾季のみに行われています。樹液採取から製造、運搬まですべて家族 のみで行うため人件費がかかりませn。経費はせいぜ い煮詰めるための薪代くらいです。砂糖ヤシの樹も自分 の土地の物なら経費はかからず、借り物ならその賃 料を持ち主に支払うが高額ではありません。 したがってヤ シ砂糖販売のほぼ全額が家族の収入となるため、農 家にとっては重要な現金収入源となっています。

 

アンコール遺跡付近では製造見学も可能 

実はこのヤシ砂糖製造はシェムリアップ近郊でも 行われており、 見学を受け入れている農家もあります。 有名なのは東メボンからバンテアイ・サムレへ行く 途中のプラダック村 です。 ここでは外 国人旅行者にも庭先で樹液を煮詰める工程を見学さ せてくれます。さらにバンテアイ・スレイ方面への道 中の農家でも見学出来ます。 どの農家も特 に見料は徴収していません。 ただし、このヤシ砂糖製造 は11~2月の乾季のみ行われているため要注意。 町なかの市場では年中売られています。

 

カンボジア料理にはヤシ砂糖がベスト 

 

このヤシ砂糖、サトウキビ砂糖と比べても糖度が 高いわりに味はしつこくなく、さっぱりとしています。 実際に固形で売られているヤシ砂糖はそのままポリ ポリと食べてもくどさが口に残らず、おやつ代わり に食べられるほどです。 これが料理に使うと逆にコク のある甘さになり、サトウキビ砂糖も多く売られて いるなか、「ヤシ砂糖のほうが料理はおいしくなる」 と、カンボジア人はヤシ砂糖を使う人が多いです。 ちな みに料理には液体、 固形、 どちらも使え、味の違い はないそうです。

カンボジアへ来たのなら、そしてヤシ砂糖の存在 を知ってしまったのなら、 固形のヤシ砂糖を買って 帰り、日本での料理に使ってみてはどうだろうか? いつもと違った味に仕上がるかもしれません。

 

固形のヤシ砂 糖。 このまま 食べてよし、 料理に使っ てよし